12月7日の日本経済新聞朝刊の一面に、『第三者増資、総会決議を義務化 法務省、会社法改正で検討』と題された記事が掲載されました。以下、引用します。

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法務省は、買収防衛などに活用される第三者割当増資により利益が縮小しかねない既存の少数株主の保護に向け、会社法改正の検討に入った。現行法では事実上、取締役会の判断で新株を発行できるが、株主総会の決議を義務付ける方向。来年秋にも法制審議会(法相の諮問機関)で始める会社法の次期改正論議で論点の1つとし、2011年の通常国会への改正案提出をめざす。
 第三者割当増資は取引先や提携先の企業など特定の第三者に新株を割り当てる資金調達方法。1株当たり利益の縮小や投資ファンドなどへの経営権の移動も考えられるため、少数株主や外国人投資家らから規制強化を求める声が強まっていた。
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この件に関し、ご質問がありましたのでお答えいたします。

これは今年10月15日に公開されたばかりの合衆国政府から日本国への2009年版の対日要求(『年次改革要望書』)を傍らに置いて読みすすめると、見えてくるものがあります。

実際、合衆国政府からの(『年次改革要望書』)には、以下のように書かれています。

以下、仮訳からの引用です。

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II-D. 少数株主の十分な保護の確保
II-D-1. 以下の事例に関する義務に対応した、取締役および支配株主に対する明確な善管注意義務を確立するため、会社法およびその他必要な法令を改正する。
(i)支配株主と企業間の取引を含む自己取引、
(ii)少数株主のスクイーズ・アウト、
(iii)企業機会の私物化。
詳論 2 1
II-D-2. 少数株主が取締役会またはその他の株主の行動により不当に不利益を被ることがないことを確保する最善の国際的慣習に従い、上場規則およびその他の自主規制の効果を強化するため、このような規則の改正を含む包括的な措置を2009年3月までに策定・実施するよう、証券取引所に促す。特に、以下の項目に関して規制強化を行うよう証券取引所に促す。
II-D-2-a. 不適切な新株発行、支配権の移動を生じさせ得る第三者割当、株式併合およびその他の手続きを通じた、既存株主の価値・議決権の希釈化。
II-D-2-b. 単独の支配株主を持つ上場企業に関する場合等、少数株主の利益を代表する十分な人数の独立取締役の選任。
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このように明瞭に、
「少数株主のスクイーズアウト」は止めよ、
「企業機会の私物化」は止めよ、
そのために「会社法改正」せよと書かれています。

また、「I-D-2-a. 不適切な新株発行、支配権の移動を生じさせ得る第三者割当、株式併合およびその他の手続きを通じた、既存株主の価値・議決権の希釈化」と明確に記されているのは興味深いことです。

「不適切な新株発行」とは、後日述べる「株主割当増資」ポイズンピルのことです。

また、「支配権の移動を生じさせ得る第三者割当」というのは、総会決議が必要ですが、これも取締役会と既存支配株主が結託すればできる買収防衛策です。もちろん、取締役会がヘッジファンドなどと組んで不当に時価を下げた上で、取締役会決議だけで時価による第三者割当増資をすることも含まれているのかも知れません。

『年次改革要望書』を受けて、民主党との政権奪取抗争の中で、合衆国オバマ新政権の支援を必要とする自由民主党・麻生政権が、「わたしたちは『年次改革要望書』を忠実に実行することをお約束しますよ」と言うメッセージを送ったと観ることができます。

(つづく)