高卒・大卒予定者を従業員として採用する旨、内定通知を出したが、売上不振のため、新規従業員の採用を見合わせるべきと経営判断したときの注意事項をお伝えいたします。

最高裁判所判決(1980年5月30日)によると、企業が採用通知の他には労働契約締結のための特段の意思表示をすることを予定していなかった場合は、採用通知により解約権を留保した労働契約が成立したとみなしています。この労働契約の効力発生の始期は、採用通知上の採用日です。

留保解約権の行使(採用内定取消し)が可能なケースは、採用予定者の経歴詐称などです。これは採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できような事実であって採用内定を取消すことが社会通念上相当と認められる場合に限られます。

さて、経営悪化などを理由に留保解約権の行使(採用内定取消し)をすることができるかですが、東京地方裁判所判決(1997年10月31)は、整理解雇の有効性の判断に関する次の4つの要素を満たすならば可能であるとしています。これらの要素の一つでも欠けるときは、解雇権の濫用として無効となりますのでご注意ください。

(1)人員整理の必要性があること:ここでは、使用者の経営判断が尊重されます。したがって、財政状況に全く問題がない場合や、人員削減後に新規採用するという矛盾した行動をとらない限り、この要件はクリアできます。

(2)従業員の解雇回避の努力をしたこと:4要件の中心要件。新規採用停止、役員報酬減、昇給・賞与停止、時間外労働削減、希望退職者募集、一時帰休、配転・出向など、使用者は真摯な解雇回避努力が必要です。特に、希望退職者募集は、解雇回避措置の基本とされ、希望退職者募集を経ない整理解雇は回避努力義務を果たしていないと見られる傾向にあります。ですから、従業者が円満に不満を持たずにやめてくれる見込みがあるケース以外は、希望退職者を募るという手順を踏むことをお勧めします。

(3)解雇基準が合理的であること:客観的かつ合理的な基準に基づいき、解雇する必要があります。欠席日数、遅刻回数、規律違反歴等勤務成績、勤続年数等企業貢献度、高齢者か若者かなど解雇による経済的打撃の大小、などといった基準を設けてそれに従って解雇します。

(4)従業員及び労働組合に対する説明協議義務をつくしたこと:人員削減の必要性、すなわち、経営状況が極めて悪いことを具体的に説明します。整理の時期・規模・方法、被解雇者選定基準とその適用、解雇条件など従業者に分かりやすく説明をすることで後々のトラブルを回避することができます。

人員余剰発生後、従業員の新規採用を中止したり、従業員へ退職を勧奨することなどしても人員整理が必要である場合で、余剰人員を他の会社に雇用してもらう努力した後、解雇対象者を合理的基準で選び、その者や労働組合と協議交渉し、納得を得るべく誠意を尽くした場合でなければ、解雇は認められないとの判例があります。合理的基準とは、例えば、加齢のため目が悪く細かな作業に従事することができない者、社内で従前から協調性に欠け勤務態度に問題があるとの評価を受けていた者などです。

以下の判示を参考になさってください。

○解雇を認めなければ、パートとして採用しない(本件解雇を争うか、パートとして採用されることを期待するか、のチョイスを迫る)という方針は、原告らの地位を無用に不安定にするものであり、従業員の身分保障の趣旨に反するので、解雇を回避する努力を尽くしたとはいえないと判断した。

○被解雇者選定基準が合理的であることに関して、定年を過ぎているものを解雇しないで、定年に達していない者を解雇したケースで、会社がこれを考慮していないのは、それだけで被解雇者を選定する基準の合理性を疑わせ、解雇は無効とした。

○組合及び労働者の納得を得るための説明・協議に関し、会社の経営状態を把握することが不可欠であり、そのためには、貸借対照表や損益計算書等の資料を十分検討する必要がある。また、右資料が膨大な量になること、短時間で控えを取ることは困難であることを考慮すれば、右資料の閲覧だけでなく、コピーを取ることを認める必要があるにもかかわらず、会社は、「試算表」と題する資料を交付しただけで、貸借対照表や損益計算書等の資料についてはコピーを取ることを認めなかったのであるから、誠実に説明、協議を行ったとはいえないとして解雇を無効とした。

したがって、売上不振のためだけでは、採用内定取消しはできないと言わざるを得ません。

以上