生彩ある人生

蒼き淵の彼方よりあふれ出づる光の泉。内なるしじまと向き合いて 輝きは聖となり私(わたくし)と成す。

2010年08月

メルシャンに見る日本的組織とその課題

ワイン大手のメルシャンでは、魚のエサを製造・販売している水産飼料事業で、複数の取引先を巻き込んで売り上げや利益を不正にふくらませる「循環取引」が2004年から続いていました。

ワイン事業が主力のメルシャンにとっては、水産飼料事業は副業です。水産飼料事業部はメルシャンがキリン・ホールディングスと資本・業務提携を結んだことで、事業の先行きに危機感を抱き、見せ掛けの業績アップを図りました。事件を起こしたのは水産飼料事業部の元水産飼料事業部長と前飼料製造部長ら4人とされ、いずれも今月12日付で懲戒解雇処分になりました。

創業1934年、東証1部の上場企業で、経営会議や内部監査によるチェック体制を整えていたメルシャンなのに、なぜ5年半に渡り不正が続けられたのでしょうか。

今月12日に公開された社内報告書と第三者委員会の中間報告(http://www.mercian.co.jp/company/ir/pdfs/irnews/irnews20100812_11.pdf)によると、メルシャンの水産飼料事業部は、売り上げの計上を操作する不正会計と、架空製造や架空販売による「循環取引」を繰り返していました。

架空循環取引は2005年度から10年12月期第2四半期(4‐6月期)までの5年6か月に及んでいまして、損失処理による影響額の合計が64億7900万円、決算訂正に伴う影響額を合わせると純利益が83億5100万円水増しされていました。にもかかわらず、内部監査はそれを見落としてきたというのです。

本社から離れた熊本県の八代や愛媛県の宇和島の工場に、直接出向いて在庫管理などを確認していたようですが、「糠のようなものを敷き詰めていたニセモノの飼料を用意して在庫の数量を偽装していた」レベルの目に見える部分はホンモノを使い、見えない部分にはダミーを仕込んでおくという、単純な誤魔化しでした。

この社内調査は、弁護士や会計士を含め、社内外から約40人を集めた大がかりなものでしたが、社内の監査部門は「調査の対象になる可能性があったため」、第三者委員会のメンバーからはずされました。水産肥料事業には構造的な取引慣行があり、非常に分かりづらい面があるにしても、内部監査が機能していなかったのは「企業風土(Corporate Culture)」に原因があったようです。


閑話休題(ソレハサテオキ)。


12日付の社内調査報告書と第三者委員会の中間報告は、メルシャンに何が起こったのかという事実認定を中心としていました。26日付の第三者委員会最終報告書(http://www.mercian.co.jp/company/ir/pdfs/irnews/irnews20100827_1.pdf)はメルシャンの統制環境・全社的内部統制の把握(ガバナンス)はどうであったのかという点と、役員らの責任を根拠付ける事実、そして再発防止策をフォカースしています。

H監査部長は社長に報告しなかった理由を次のように語っています。

『未だ疑いの段階にあったことに加えて、社長はKH社から来た人であるので、社長に話せばKH社を巻き込んで大問題になってしまうが、B常務もC常務もME社の人間であり、ある程度疑いの段階でも話していいだろう』(21頁)

社長が事実を把握するのは、今年5月に取引先から指摘されてからでした。この発言がシンボリックに伝えてくれることは、会社であるキリン・ホールディングス(HD)からやって来た現社長に、メルシャン出身の役員や幹部社員たちが遠慮して何もいえなかった事実です。また、報告書を読み進めると、キリンHDから来た方々もメルシャンが名門企業ゆえに遠慮して言うべきことが言えない状況にあったことも分かります。

本件は、キリンHDのようにM&A(企業合併・買収)により外部企業を加速度的に取り込むグループは、買収時の経営状況チェックに加え、不正を見抜く術を手にする必要があることを示唆しています。

「出身母体を超えたコミュニケーション」が求められるわけですが、それ以前に合併・買収する組織の構造機能分析により企業風土を解明していくことが必要不可欠となります。それは、M&Aによる拡大路線を目指すすべての企業に当てはまります。転ばぬ先の杖です。

キリンHDは27日、メルシャン再建のため、株式交換によって12月に完全子会社化すると発表しました。メルシャンは植木宏社長ら取締役6人や常勤監査役1人を報酬返上などの処分にしました。元社長ら6人には、退職金の返納などを求めます。本件に関与した元部長らに対する民事・刑事の責任追及も検討中とのことです。

最後に。80頁もあり読み応えのある本報告書ではありますが、社外監査役と社外取締役がなぜ機能しなかったのかが書かれていません。もしかすると、彼らは実質的な組織運営のアクターに組み込まれていないのかもしれません。日本企業が抱える問題の縮図がここに見えてきます。

感謝

内部告発と企業風土

内部告発した三菱重工社員、「仕事奪われ、うつ状態に」
2010年8月4日

社内の不正行為を告発したら仕事を取り上げられ、うつ状態になったなどとして、労災認定を求めていた三菱重工業社員の西村茂さん(56)について、国の労働保険審査会は労災と認める決定をした。

 7月14日付の裁決書などによると、西村さんは同社神戸造船所に勤めていた2004年7月、複数の社員が虚偽の実務経験証明書を国土交通省の外郭団体に提出して監理技術者資格者証を不正取得したとして、社内のコンプライアンス委員会に通報した。

 その後、所属部門の再編をきっかけに、専門分野とは異なる雑務しか与えられなくなった。05年1月から眉毛の脱毛や頭痛の症状を訴え、自律神経失調症やうつ状態との診断を受け、断続的に休職しながら治療を受けていた。

 西村さんは一連の病気は業務上の理由で発病したとして、神戸西労働基準監督署に労災申請したが、認められなかった。処分を不服として兵庫労働者災害補償保険審査官に審査請求したが棄却され、労働保険審査会に再審査請求していた。

 同審査会は労災を認めた理由について「高い資格を持ちながら雑務というべき補助的業務を担当させられた心理的な負荷は相当強く、会社側は改善する積極的な動きをとらなかった」とした。

 西村さんは「内部告発後の会社の対応に問題があった点を認めてもらい、本当にうれしい」と話している。三菱重工業神戸造船所は「労基署から決定について説明を受けたが、会社としてコメントすることはない」としている。

http://www.asahi.com/kansai/news/OSK201008040048.html

社内における不正発見は、不正リスク管理のポイントで重要ですが、実務上の困難をとなうものです。しかしながら、予防的な内部統制や事後的な危機管理と違い、不正リスクの低減実現はコストが低く、社内での従業員のスキルアップとして効果的な手法です。同時に、コンプライアンス遵守の企業風土を育成しながら、厳格な社内ルールにより社員が持つことが多い嫌悪感、やる気の喪失を回避できると言う意味では、このような発見的手法は企業コンプライアンスに貢献するものです。

今回のケースは、社会規範と社内規範のどちらを優先させるかの問題ですが、三菱重工の企業風土を「他山の石」として、わが社の風土を省みても良いのではないでしょうか。

感謝

割増賃金の算定基礎賃金

労働基準法施行規則第21条では、時間外・休日労働、深夜労働を行った場合の割増賃金に関し、算定基礎賃金対象から除くことができる手当について規定されています。

「法第37条第4項の規定によって、家族手当及び通勤手当の他、次に掲げる賃金は、同条第1項及び第3項の割増賃金の基礎となる賃金には算入しない」(労働基準法施行規則 第21条)

家族手当
通勤手当
別居手当
子女教育手当
住宅手当
臨時に支払われた賃金
1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金

これらは単なる例示ではなく、限定的に列挙されたものですから、これらに該当しない通常の労働時間の賃金は、全て割増賃金の算定基礎とする必要があります。

しかし「残業手当」は、割増賃金の計算単価に算入すると賃金の二重払いになることから、除外することが認められています。

また上記の手当が支払われていた場合でも、実際にこれらの手当を除外するに当っては単に名称によるものでなく、その実質によって取り扱うべきものです(S22.9.13 基発第17号)。例えば、「生活手当等」と称していても、実質的に「家族手当」に該当するものは除外できます。他方、「家族手当」の名称を持っていても、実質的には別ものである場合は、除外されないこととなります。

閑話休題(ソレハサテオキ)。

みなさんの会社は「皆勤手当・精勤手当」を導入なさっていらっしゃいますか?

この取り扱いには、ご注意なさってください。

健康保険法と労働基準法とでその処理が変わるからです。

健康保険では、標準報酬の随時改定の際に「固定的賃金の変動」によって判断し、精皆勤手当は毎月必ず発生するものではないので「非固定的賃金」に区分します。

労働基準法では、精皆勤手当は「臨時に支払われる賃金」ではなく割増賃金の算定基礎に算入するものとします。もし、精皆勤手当を算入しなくてもよいとすると、「基本給16万円、精皆勤手当8万円」のような給与体系にすることにより残業代単価を不当に低く計算することが可能になってしまいます。月160時間労働の会社なら、本来1時間あたり1,875円であるはずの割増賃金を1,250円に減額できることになります。

就業規則に「精皆勤手当については、過去2ヶ月の出勤状況により算定し偶数月に支給する」と定めている会社では、「1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金」にはなっていますが、この精皆勤手当を割増賃金の計算上除外して支払っていると、残業代の一部不払いとして雇用者から請求を受けるリスクを生み出すことになります。

欠勤者が皆無に等しく、入社以来、毎月精勤手当を支払っている雇用者が多数いる会社は、請求を受けるリスクが更に高まります。

ご注意ください。知って備えれば、憂いなしです。

感謝

法と経済のジャーナル

八月になりました。
夏らしい暑い日々が続いています。
いかがお過ごしでしょうか。

朝日新聞社の有料ネットサイト「法と経済のジャーナル」は、よく勉強なさった新聞記者たちが問題・事件を深く掘り下げ明らかにしています。

経済記事と言えば経済人や株主たちの視点からのみのものが多いのですが、法と経済にまたがる諸問題は多面体であり多くの切り口を持っています。

ですから、特定の視点や即時性にこだわることなく、
じっくりと取り組んでくれるこのジャーナルには期待が持てます。

リスク予防の実務にも一役かってくれそうです。

おススメします☆⇒
http://astand.asahi.com/magazine/judiciary/

さあ、笑顔でこの夏を乗り超えましょう。

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