ボケ防止に、「頭の回転がよくなる」とかいうパズルをなさる方は多いそうです。回転ばかりが良くなっても・・・と思うのは考えすぎでしょうか。自然界では、2次元的な「回転(スピン)」にともない3次元的に「軌道(オービット)」が生まれます。本来は、目的通りのオービットを得るための適切なスピンを自分の頭の中に生成させる「頭の回転」が求められているのです。不幸なことですが、既存の教育システムはスピンにばかり目を奪われてしまい、オービットに意識が届かないという状態が続いています。


閑話休題(それはさておき)


頭の体操よろしく、「殿」「様」「士」「師」の使い分けを見てまいりましょう。

「殿様」という言葉は、主君や貴人を表す尊敬語ですが、江戸時代には旗本または大名に対し使われたのです。旗本は、石高が1万石未満で儀式などで将軍が出席する席に参列する御目見以上の家格を持っていました。徳川幕府は昔から続く名門の家柄を重視し、吉良家(足利一族)、畠山家、今川(分家の品川家)、武田家などは旗本の中でも高家として、石高は多くはないが官位などの面で優遇しました。現在では比喩的・皮肉的に、「殿様商売」などのように、世間知らずの金持ちなどの意味で使われることがあります。

さて、この「殿様」を「殿」と「様」に分けてみましょう。「殿」は人名や官職名の後につけて話し手の敬意を添える敬称として書き言葉で使われますが、日常の会話で用いることはまずありません。元来「殿」は邸宅を意味し、そこからその邸宅に住む人を指すようになりました。平安時代には身分の高い人物の官職名に使用されていたようでですが、鎌倉時代には「殿」の敬意は低下して「様」が併用されるようになったといいます。ビジネス書面等では、目上・目下を問わず敬称として使用しますが、目上の人への私信で「殿」を用いることはありません。

「殿」と「様」は敬意の軽重で異なるところはなく、使用されるシーンに違いがあるのです。面識や交流がある方に書状等を送るなら、「様」を用います。事務的なやり取りなら、「殿」を用いても良いのです。
赤門
この写真は旧加賀藩前田家上屋敷の御住居表御門で、国の重要文化財に指定されています。赤門という名前で親しまれています。赤門は第11代将軍、徳川家斉の第21女溶姫が、加賀藩第13代藩主前田斉泰に輿入れすることを祝って1827(文政10)年に建築されました。赤門自体は、将軍家の子女が嫁ぎ先で住んだ場所である御守殿(御住居)の門として建てられるもので、焼失などしたら再建できない決まりがありました。ですから、この東大の赤門は貴重な存在です。ちなみに東大の敷地は加賀藩の屋敷跡103,822坪を利用しています。

士師(Judge)は、旧約聖書『士師記』に描かれる指導者を指し、ヨシュア以後の王国時代の前から預言者サムエルの間まで古代イスラエルを裁いた人々です。「士師」という呼び方は中国語聖書に由来します。日常、何気なく使っている言葉には「士」と「師」がつく言葉がたくさんあります。行政書士、調理師、医師、看護師、美容師、弁護士、公認会計士、社労士、消防士など。では、「士」と「師」どのように使い分けるのでしょうか。気になりますね。

「士」には仕えるという意味があり、資格・役割を持つ人のことを言い、「師」は学問・技術・芸能を教える人、または技術者のことを言います。全てがピッタリと、あてはまっている訳ではありませんが、士と師の区分の仕方が分かります。あと面白い例では、詐欺師は「資格の有無に拘らず、「士」と「師」は音は同じですが、意外に厳密に区別されています。

元々「士」は支配階級を表す字で、今は公的資格職と戦士の意味に分かれていますが、どちらも体制側の職である点が共通しています。「行政書士」や「公認会計士」は独立開業できる専門職ですが、国家の存在を前提とすることに変わりなく、やはり体制のメンバーであることに違いありません。

「師」は資格の有無に関係なく、技を究めて「師匠」と呼ばれるケースが当てはまります。詐欺師や箱師に資格があるわけではありませんが、「技を極めている人」です。例外的に「看護師」、「助産師」、「保健師」が「士」ではなく「師」になっていますが、これは性差別解消を目的として改称されものです。1990年代から徐々に男性保母の就労数が増した「保母」は、「保育者」という名称が選考に上がりましたが「者」は職業名として適切ではないということで、「保育士」に決まったのでした。

公的資格職】: 保育士、行政書士、運転士、栄養士、弁護士、弁理士、会計士、介護福祉士、気象予報士、救急救命士、建築士、航海士、歯科技工士、司法書士、社会保険労務士、消防士、整備士、税理士、操縦士、測量士、中小企業診断士、土地家屋調査士、飛行士、不動産鑑定士、理学療法士、代議士・・・

戦士】: 道士、武士、紳士、騎士、陸士、海士、空士、戦士、闘士、兵士、海上保安士、棋士、義士、方士、浪士、勇士・・・

師匠】: 教師、軍師、講師、医師、絵師、絵仏師、鋳掛師(いかけし)、いかさま師、筏師(いかだし)、鋳物師(いものし)、色事師、占い師、甲冑師(かっちゅうし)、軽業師、釜師、瓦師(かわらし)、看護師、技師、奇術師、祈祷師、曲芸師、釘師、薬師(くすし)、クリーニング師、講談師、琴師、駒師、細工師、詐欺師、猿楽師、指圧師、歯科医師、獣医師、勝負師、助産師、銀師(しろがねし)、鍼灸師(しんきゅうし)、錫師(すずし)、整体師、占星術師、相場師、染め師、殺陣師(たてし)、足袋師(たびし)、茶筅師(ちゃせんし)、調教師、彫金師、調理師、調律師、手品師、手配師、道化師、庭師、塗り師、箱師、花火師、場面師、美容師、琵琶法師、振り付け師、ぺてん師、法師、牧師、保健師、魔術師、呪(まじな)い師、マッサージ師、漫才師、薬剤師、山師、槍師、弓師、理容師、猟師、漁師、業師・・・

一所懸命、勉強なさって試験に合格し、資格・免許を取得することは、2次元的な「回転(スピン)」と見ることができます。そして、それが自分にふさわしいヴィジョン(方向性)を備えたとき、3次元的に「軌道(オービット)」を生み出す事が可能となります。エレクトロン(電子)とプロトン(陽子)、そしてスター(恒星)とプラネット(惑星)は、「スピン」と「オービット」を同一時空間に生み出していて、自然界の掟と見ることができます。2次元の平面的な「回転」に執着する学校教育から、それを乗り越え3次元レベルの「軌道」を生み出す自己教育へ進めたいものです。

車のエンジンを回転させるのみで、サイドブレーキをかけたままスタートしない状況から、
方向や目的地を定めブレーキを解き、アクセルを踏んでスタートしようということです。

大きな笑顔で、師走をエンジョイしましょう。

感謝