永平寺
  千利休さん(1522〜1591年4月)の開いた茶の湯のお手前(作法)は、水を大切に敬う徳を積む実践。茶釜からお湯を茶柄杓(ちゃびしゃく)で汲んで茶碗に注ぐとき、全部を茶碗に注がずに、必ず若干のお湯を茶碗に戻します。この利休さんの茶の精神は、永平寺の「半杓(はんしゃく)の水」の訓(おし)えに通じる。

  永平寺(旧称・大仏寺、福井県)は、曹洞宗の開祖・道元禅師(1200年1月〜1253年9月)によって開かれました。道元さんはここで毎朝閼伽(あか・仏前に供える水)を、付近を流れる大仏川で汲んだそうです。そのとき最後に杓(しゃく)に汲んだ水の半杓の量を、大仏川に戻すのを常としていました。こうして彼が、豊富な川の水でも、つつましやかに半杓の水を元の流れに返して下流の人におくる行為は、将来の人々に彼が徳を積んで与えるということ。
 この行為は水を汲むだけとは限りません。私は札幌の藻岩山麓の旭ヶ丘に在住。ここは山に近いので時期になると山菜採りの人々でにぎわいます。根こそぎ木の芽や葉をむしりとり、枝ごとへし折って帰られると、木々は往々にして枯れ死んでしまうもの。翌年にも必ず木が成長するようにと、「半杓の水」を元の川に戻すように、芽や葉を大切に扱い残したいものです。きっと後人にもその願いは伝播するに違いありません。

  永平寺の正門の向かって右側の石碑には、『杓底一残水』(しゃくていのいちざんすい)、そして左側の石碑には『汲流千億人』(ながれをくむせんおくのひと)の文字があります。これは73世熊沢泰禅禅師の筆跡。一杓の水でも元の川へ流れることによって、多くの人が恩恵にあずかるもの。物の生命を大切に、無駄にはしないという覚悟が伝わってきます。

 半杓の水を大切にし、人々のために川へ戻した道元さんの訓えは、こうして今も伝わっています。永平寺、行って見たいですね🎶

■場所 : 福井県吉田郡永平寺町志比5₋15
■交通 : 金沢から福井までは、特急のサンダーバードを利用。
      福井駅から永平寺へのアクセスは京福バス(福井-永平寺線)が便利。
     「東古市」駅下車、高速バスで30分。
■電話 : 0776-63-3102(大本山永平寺)

生彩ある人生@下段の注意20200103