大原 浩氏のエッセイ群に、深く物事の道理に通じる才知を覚えました。江戸時代は鎖国しながらも自給自足の再生可能社会として繁栄した時代であるとする見識は、白眉です。1603年から1868年までの265年間続いた江戸幕府の徳川将軍の全員が、自然環境の保護や治水に力を入れ、新田開発を奨励。この政策の遺産(結果)として、日本の国土の約7割が森林となりました。現代日本は「鎖国」できる能力がることを記した「現代ビジネス」の彼のエッセイ="">「新型コロナ惨劇の今だからこそ叫びたい「鎖国」と「循環型社会」万歳」(2020.04.10)も合わせて読むと、楽しい週末になりそうです。

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ウォーレン・エドワード・バフェット氏(Warren Edward Buffett:1930年8月生)

コロナ危機で、じつは日本が「世界で一人勝ち」する時代がきそうなワケ
もしバフェットならばこう投資する…!
(大原 浩 現代ビジネス 2020.4.14)
コロナ相場、投資の神様・バフェットはこう動く…!
  2月3日公開の記事「目先の株価にバタつくな!バフェットの神髄は『機が満ちるまで待て』」、3月25日の記事「『コロナほどの大暴落も悠然と構えればよし』バフェット流投資の秘訣」で述べた様に、今回の新型肺炎ショックによる株式暴落も、「未来を予想できないから常に備える」バフェットにとっては「想定内」である。
  「株式市場が1年以上閉鎖されても平気」な優良企業にしか投資しないから、あわてて安値で売る必要がない。
  昨年9月の外国企業としては過去最大の発行額となった、6本の円建て社債で集めた合計4300億円も含めて、潤沢な現金を準備して腕まくりで待ち構えているであろう。
  それでは、今が大バーゲンセールだと狂喜乱舞して買いに走っているのかといえばそうでもない。
  2003年のSARS騒動の際には、まだ世間が恐怖におののいている中で、はじめての外国株(ペトロチャイナ)への本格的投資を行って、大胆不敵ぶりを見せつけたのがバフェットだ。
  しかし、2月12日の記事「中国・習近平が恐れている、武漢肺炎とSARSの『大きな違い』」で述べた様に、SARSが共産主義中国(日本は別にして他の国々も)の北京オリンピックへ向けての景気急上昇期に発生したのに対して、今回の新型肺炎は、米中貿易戦争で中国景気がすでに大幅に悪化している時期に広がった。
  さらには、SARSの時には世間がどのように騒ごうと、バフェット独自の判断で流行の収束を見極めて投資に踏み切ったが、今回のように世界的パンデミックになり、米国がまだその真っただ中にいる時には投資には踏み出せないはずだ。
  バフェットは、いわゆる「企業再生案件」から常に距離を置いているが、彼が「再生の道筋が見えた」と判断した時に限り投資を行う。
  株式市場の暴落においても同様だ。「回復」の兆候を独自に判断して、世の中が恐怖におびえているときに果敢に投資を行うのがバフェット流である。
  ちなみに、日本の株式市場では「本質的価値」に対して私が見る限り株価がかなり割安な企業が数多く見受けられ、「買いたい」衝動に駆られることがしばしばあるが、「6発しか込めていない拳銃の弾丸を撃ち尽くしたら、後は何もできない」のも事実だ。
  極上の獲物を弾切れでみすみす逃さないためにも、今は忍耐の時期ではないだろうか? バフェットは「投資の利益の大部分は『忍耐』に対する報酬である」と述べている。
  魅力的な投資先はたくさんあるが……ナンピン買いを行うときは特に買い急いではいけない

落ちてくるナイフを素手でつかんではいけない
  市場に長く関わっている方なら「落ちてくるナイフを素手でつかんではいけない」という警句を聞いたことがあるであろう。屋上から誰かが投げたナイフを素手で受け止めたら大けがをする。しかし、地面に落ちたナイフを拾うことはいとも簡単だ。
  株式市場でも、急落している時にはさらに急落する可能性があるから大けがの可能性が高い。だからバフェットが株式を購入するのは「ナイフが地面に落ちてから」である。
  具体的に言えば、チャートで安値を付けた後、一定期間観察して「底値」を確認してから購入する。ほぼ毎回この手法をとっている。最安値で買うチャンスを逃すことにはなるが、長い間に5倍・10倍以上の株価を目指すバフェット流ではそのような差はあまり問題にならない。リスク回避の方がはるかに重要なのだ。
  しかも、さらなるリスクヘッジのために複数回に分けて購入する。ペトロチャイナへの投資の際にも、かなり株価が上昇してから2回目の購入を行っている。
  どうせなら1回目の安値の時にすべて購入すればいいのにと思いがちだ。しかし、バフェットは「自分が安値だと思った判断が間違っている」ことにも「備えている」のだ。実は、2回目の購入資金は、自分の判断が間違っていた時、さらに下落した株をナンピン買いし平均コストを下げるために準備していたものだといえる。

3月末決算の発表はこれからが本番だ
  バフェットは世の中が悲嘆に暮れている時に大胆に株式を大量購入するが、実は「自分には未来が予想できない」ことを自覚し、何重にもセーフティネットを張って「備え」をしているからこそ実行できることを十分理解しなければならない。
  バフェットは、「プールの水が抜かれて初めて誰が裸で泳いでいたかわかる」と述べる。市場が浮かれている時は、プールの水が満たされていて誰が裸で泳いでいるかということが分からないが、カラになってしまえば一目瞭然だということである。
  それでは、現在の状況はどうであろうか?
  プールの水が少し減り、状況を推察する鍵は見えるようになってきたが、裸の人間の姿をはっきりと確認できるほどの状態では無いように思う。
  海外の一般的会計基準である12月末決算の日本企業の発表は既に終わったが、全体から見れば少数であるし、12月までの決算内容に新型肺炎ショックの影響は含まれていない。
  しかし、5月から本格化する3月末決算企業の数字にはその影響が現れるはずだ。今は推測の域を出ない状況が、まさに「裸になる」わけだ。
  ただ、3月末までの数字も全体の影響の一部にしか過ぎないといえる。
  4月1日以降の「来期」の見通しがどのようになるのかが注目される。

2番底は大きくなるかも
  起こり得ることは、見通しが甘いという「責任追及」を恐れる企業経営者が一斉に「悲観的」な予想を披露することである。ネガティブな数字を発表しておいて、結果的にそれよりも良い業績を出せば「よく頑張った」と褒められるという計算だ。
  したがって、相次ぐ悲観的見通しが続き、それに対して株式市場がさらにネガティブに反応して新たな暴落というシナリオも十分ありうる。
  したがって、我々はまだ「備える」段階にいるのだが、日本の上場企業が「空前の内部留保」をため込んでいることを忘れてはいけない。巨額の内部留保には「税金をかけろ」などという批判的な声も多かったが、今回のような危機が起こって初めてその重要性が分かる。
  バフェットは、師匠ベンジャミン・グレアムの教えもあって、企業の負債比率(利益に対する有利子負債の比率)については、かなり厳格に査定して投資するから、保有企業については危機がやってきてもほとんど心配しない。
  日本企業も内部留保が厚く、いわゆる無借金経営などの企業について過度に心配する必要はまったく無いが、有利子負債の多い企業はかなり厳しい状況に追い込まれる可能性がある。
  現在歴史的低水準の金利がこれから上昇する可能性があることは、3月15日の記事「マスク&トイレットペーパー騒動の次に待ち受ける金利上昇の大リスク」で述べた通りだ。いくら株式市場が回復しても、その前に投資先企業が借金を払えず破たんしてしまったらどうしようもない。
  ただし、米FRBを始めとする中央銀行が猛烈な資金供給を行い、各国政府がバラマキ(国民の評判はが悪くケチだと非難されるが、幸運なことに日本政府の対応は抑制されている)を行っていることにも注目すべきだ。
  今回の新型肺炎ショックがリーマンショックなどの金融危機と違うことについては、私が執行パートナーを務める人間経済科学研究所代表の有地浩(「新型コロナ・ショックはリーマンショックより手ごわい」参照)も同意見だが、金融危機ではないので、金融政策や財政政策で実体経済の状況を好転させることはほとんどできないと考えられる。

逆に金融バブルの可能性も
  供給された資金がこれまで同様実体経済には回らずに、金融商品に向かって「大金融バブル」が生じる可能性もかなりある。特に日本の株式市場は、前述のように「本質的価値」に対して株価が比較的割安な状態だから、バブルが大きくなる可能性がある。
  不動産の未来は、2018年9月17日の記事「一般投資家はこの先、日本の不動産には手を出してはいけない」、2月15日の記事「ご存じですか、日本のマンションを廃墟に追い込む『共有地の悲劇』」で述べた様に暗い。
  また、安全資産と言われる国債も、今後の政府の財政出動の規模によっては「赤字による財政破綻懸念」が起こるし、そもそも金利が上昇を始めれば、既発の低金利国債の価格は下落する。
  したがって、余剰資金が日本の株式市場に集中して大型のバブルを引きおこす可能性もある。
  しかも、現在新型肺炎の広がりが抑え込まれているだけでなく、「新型肺炎後」の世界でも日本の経済的重要性がさらに増加する可能性が高い。「安ければいい」というメイド・イン・チャイナから高品質の日本製へのニーズの高まりは、欧米先進国が中国製の医療製品を「欠陥品」として突き返す事例が頻発していることからも明らかだ。
  また、5月29日の記事「世界経済低迷の最大原因・中国が退場すればデフレが終わる」で述べた様に、共産主義中国の崩壊や北朝鮮化によって世界から切り離されることは、長期的に考えて日本にプラスである。

日本が冷戦時代に大発展した
  冷戦の始まりは1950年の朝鮮戦争だが、この戦争によって日本は破綻の瀬戸際から救われた。
  また、冷戦終了の象徴とされるベルリンの壁崩壊が1989年、続く1991年のソ連邦崩壊で冷戦は完全に終わった。日本のバブル崩壊は1991年だが、この象徴的な関連性は偶然の一致とは言い切れないのではないであろうか?
  つまり、日本の目覚ましい発展は東西冷戦とともに始まり、冷戦終了で終わったということである。しかも、その後のグローバル化の中で「失われた◎十年」という言葉に象徴されるようにもがき苦しんだ。
  なぜこのようなことが起こるのか?理由は色々考えられるが、日本は実はグローバル化に向いていなくて「自給自足(循環型)」社会に向いているのではないであろうか?
  4月10日公開の「新型コロナ惨劇の今だからこそ叫びたい『鎖国』と『循環型社会』万歳」で述べた様に、日本の<再生可能型社会=自給自足経済>の遺伝子はDNAに刻み込まれている。世間では誤解されているが、日本は最近でも輸出依存度が15%程度と極めて低い「自給自足型」社会なのだ。
  確かに原油などのエネルギー輸入面では弱点を抱えるが、幸いなことに原油価格は市場空前の安値だ(ただし、この安値が行き過ぎであることは、人間経済科学研究所・研究パートナー藤原相禅の研究レポート「原油需給のパラダイム転換で大相場到来か」参照)
  もちろん、日本のバブル時代に、エズラ・ヴォ―ゲルの「ジャパンアズナンバーワン (1979)」に踊らされて、ベトナム戦争の後遺症で苦しむ米国を追い抜いたと錯覚した愚を繰り返すべきではない。
  しかし、これまでの日本はベトナム戦争の後遺症ですべてネガティヴにとらえていた当時の米国そっくりである。もちろん、米国は1994年頃からIT・インターネットに牽引されて爆発的な成長を遂げた。
  実は、私は今回の新型肺炎ショックが「世界の中で日本だけが一人勝ちする時代」の再来のサインである可能性を捨てていない。
  もちろん、4月3日の記事「『コロナ戦争』の後にいよいよ始まる『本物の米中戦争』」で述べた、長く陰鬱な時代の到来の可能性も同様に排除していない。
  結局、現在はバフェット流で言えばまだ「道筋が見えない」状態だから、拳銃に詰めた弾が6発だけだとしたら、大事に温存すべきといえよう。

大原 浩氏のプロフィール
国際投資アナリスト/人間経済科学研究所・執行パートナー
株式会社大原創研代表取締役・GINZAXグローバル経済・投資研究会代表。同志社大学法学部を卒業後、上田短資(上田ハーロー)に入社。外国為替・インターバンク資金取引などを担当。フランス国営・クレディ・リヨネ銀行入行。金融先物・デリバティブ・オプションなど先端金融商品を扱う。大原創研を設立して独立。『証券新報』の顧問を約7年半にわたり務める。2018年、財務省OBの有地浩氏と人間経済科学研究所を立ち上げる。著書に『韓国企業はなぜ中国から夜逃げするのか』(講談社)、『銀座の投資家が「日本は大丈夫」と断言する理由』(PHP研究所)他多数。(以上)

大きな笑顔の佳き週末をお過ごしください。

生彩ある人生@下段の注意20200103