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「藤原さんへの公開メール」と題されたフリーランス・ジャーナリストーの藤原肇博士(1938年生)と会計士の山根治氏(1942年生)の対話記事を通じて、私たち読者は intelligence のエッセンスを知ることができます。山根治ブログ 2022年3月24日号から転載させていただきます。「人生は短く、人為は長く、機会は逃げやすく、実験は危険を伴い、論証はむずかしい。医師は正しと思うことをなすだけでなく、患者や看護人や外的状況に助けられることが必要である」“Life is short, and Art [of medicine] long; the crisis fleeting; experience perilous, and decision difficult. The physician must not only be prepared to do what is right himself, but also to make the patient, the attendants and the externals cooperate.” と例えられるアフォリズムがお二人の交流から伝わります。
コメント・メール(41)です。

 山根治さま

 私への公開メール(47)で、ボッタクリの…は、内調が仕掛けた罠の執行人で、山根さんを冤罪で逮捕して、口封じする目的のために、破廉恥な手口を使ったとありました。今の日本の司法当局の乱れは、安倍のゾンビ政治を放置し、犯罪の起訴もしない検察を始め、詐欺師同然の弁護士が横行し、満足に法廷を維持できない三島裁判長など、無能集団に象徴されています。
 第二次安倍政権の絶頂期で、嘘と改竄に明け暮れていた、2019年に出版した本に、『ゾンビ政治の解体新書』があり、ゾンビ政体の断末魔に関し、克明にそれを論じています。その第一章を飾るのは、「断末魔を迎えた安倍ゲシュタポ内閣の悪足掻き」で、公僚の君臨により、警察国家に成り果てた、息苦しい日本の政治について、次のように描写しています。
 「・・・首相直属として秘書官がおり、定員が五名以内ということで、それと共に筆頭首相補佐官として 内閣情報官を兼任する北村滋は、外事警察を担当した公安畑のプロで、官邸のアイヒマンと呼ばれている。また、政務担当の筆頭首相秘書官には、資源エネルギー庁次長を歴任した、経産官僚の今并尚哉が顔を並べており、菅、萩生田、野上、杉田、北村、今井の五人が、安倍内閣を支える五人組とされ、そのうち二人が公安のプロだ。・・・口が軽いお調子者の萩生田に対し、公安畑で実績を誇っている、内調室長で鍛えた経歴を持つ杉田が、お目付け役として控えて、監視を怠らないのだと言う。謀略工作や盗聴事件で名高い、神奈川県警の 本部長を歴任し、警察官僚のエリートの人生航路をたどり、快適な老後を迎えるはずだのに、杉田の後輩には人材が不足していた。 だから、七五歳の老齢でも官途に就き、頼りない北村と萩生田の面倒を見て、お友達内閣を支え続けている。」
 その後に安倍内閣が潰れて、菅と岸田が首相になったので、老齢の杉田は退官したが、無能な荻生田が経産相だから、エネルギー問題を扱うために、今井は内閣参与として残りました。また、公安畑で訓練を受けた後で、在外公館で領事などを経験し、警察庁の警備局長を歴任してから、内閣調査室長を勤め上げ、最後に官房 副長官になるのが、警察官僚の栄転コースです。
 この出世街道こそが、官僚人生の花道だから、役人の多くが憧れており、それを実現したのが川島弘守で、似ているが一歩遅れた人に、私の読者の松橋忠光がいて、彼は警視総監の下の警視監で退官した。退官後の彼は私に接近し、多くの公安情報を提供してくれ、その一部は拙著で公開したが、『インテリジェンス戦争の時代』には、次のような記述があります。
 「・・・・歴史の証言を集めるのが、私の長年の道楽だから、老人や読者を訪ねては、昔話を聞き歩いているが、あるとき引退した、警察庁のトップとの会話で、『文芸春秋』の田中編集長と喧嘩して、絶交したと言ったら、こんなこともあると教えてくれた話がある。
 プロ野球の川島広守コミッショナーは、内調室長や内閣官房副長官を歴任したが、60年アンポの後に、ユーゴの一等書記官から戻り、『俺がアンポ騒動の時に日本にいたら、岸首相が辞めるような、ぶざまな警備はしなかった』と悔しがっていた。そして、大使館への出向以外は東京を離れずに、警視庁と警察庁の往復専門で、公安を担当していたが、警察庁時代の川島警備局長は、何か問題が起きると『田中を呼べ、田中に来いと言え』と怒鳴り、そこに駆けつけるのが、取材記者時代の田中健五だった。
 こうして内調ルートで編集者として出世し、『諸君』の編集長にも就任したのだから、田中編集長が頻繁に、交際した影響力で、清水幾太郎が転向した理由も分かった。また、『われわれ警察OBは、三田中と呼んで、田中清玄、田中角栄、田中健五の戦後派トリオは、闇のキングでお国のために役に立った点で、それなりに功績を残したと評価しています。
 かつては保守派のサロン誌だった『文芸春秋』は、政府の広報記事や内調ルートのネタが多いし、国民の宣撫工作用に役に立っていますよ』と、その内務官僚OBが苦笑していたのが印象深い。・・・

 この話を語った松橋さんは、、米国でCIAから訓練を受け、警察庁に戻って内調で仕事をし、警視総監に続く警視監で退官した、私の熱心な読者の一人です。『わが罪は常にわが前にあり』は、クリスチャンの彼にとって、民主的な市民の警察ではなく、腐敗した犯罪の巣窟になった、警察の腐敗の告発と共に、彼が辞任した懺悔の書でもあります。
 警察庁や内調部員の時に、松橋さんは川島の部下で、その動きを逐一観察して、内容を教えてくれたが、彼がCIAで受けた訓練だけは、教えるのを拒否しました。だが、現在は『内閣』調査室秘録』があり、第二部の「CIA研修」を読めば、訪米日程について書いてあるので、詳細が理解できるだけでなく、大した訓練でないことが、一目瞭然に読み取れます 。
 しかも、「政策科学研究会(PSR)」を読めば、国家の政策を考えるため、内調が勉強会を主催して、毎月のように集まり、川島内調室長を囲む形で、政治や国防を話し合ったようです。集められた御用学者は、山崎正和、佐藤誠三郎、高坂正尭、黒川紀章、香山健一、清水速雄、公文俊平、中島嶺雄などで、1971年から1978年まで、集まりの模様の記録が、具体的に書いてあります。
 また、「委託研究を担った人々」には、各分野の多くの日本人が、僅かな金で内調の手羽先として、協力していた事実が、貰った報酬額と共に、請け負た記録の形で残っています。こんなレベルの人間を集め、市民教養講座的な話で、内調が国家戦略を考えたのでは、お先真っ暗といえるし、全く情けない限りですが、日本のインテリジェンス能力は、こんな水準だったのです。
 1970年代の私の人生は、フランスから北米に渡り、多国籍石油企業で働き、資源衛星の写真解析をして、世界中を観察していたので、石油地政学が良く分かりました。また、1971年の『文芸春秋』に、石油政治の記事を書き、1973年の春の段階で、石油危機襲来を論じた、『石油危機と日本の運命』が、半年後の石油ショックで、ベストセラーになりました。
 そのお蔭もあったので、私は日本のメディアから、取材を受ける機会が増え、若気の至りもあって、雑誌やテレビに出ましたが、日本が世界情勢の認識面で、立ち遅れだと痛感しました。そこで講演を引き受けたり、東京銀行の調査部では、世界情勢のゼミをしたりして、多くの識者に知り合い、議論をし合った顔ぶれに、内調ご用達の人間がいました。
 そのほとんどは学者や、評論家を名乗る人で、こんな程度の知識や体験でも、日本では通用すると驚くほど、そんな水準の人でしたが、内調はそんな手合いを使い、国家戦略を担っていました。それは内調に属していた、松橋さんの情報感覚や、インテリジェンスに対して、脇の甘さでも分かったが、内調や地検を操るCIAなら、十分に見抜いていました。
 なにしろ、東京地検特捜部の誕生は、隠匿物資の摘発のために、GHQの肝いりで作った組織ですし、検察や警察は手先として、占領政策の助手をした存在です。サンフランシスコ条約により、日本は独立したとはいえ、GHQは米国大使館が引き継ぎ、対日政策の多くはCIAが、半植民地の日本政府担当で、米軍と共に君臨し続けました。
 そのことは内務官僚として、公安を担当した松橋さんも、痛感していたことであり、裏金作りが公然と行われ、植民地のように腐敗して、市民を守るべき警察が、民主社会の敵になっている。それを危惧した彼は、「一粒の麦は、地に落ちて死ななければ、いつまでも一粒のままである。しかし、死ねば多くの実を結ぶ」という、ヨハネの福音書に従い、懺悔の書を書いて辞任し、過去の罪を告白したのです。
 「…警察社会における不義の実態は、簡単なことである。いわゆる『二重帳簿』」方式による、予算経理による裏ガネ作りが、中央からすべての都道府県にわたる、全警察組織において、行われていることである。そこでは最低限、公文書の偽造と印章の虚偽使用がなされ、外部には絶対に秘匿しなければならない、秘密であることが大前提である。
 これは過去半世紀にわたり、私が著書で告発したことに、共通しているテーマですし、それが拙著の読者の松橋さんと、共通する意識だったので、出会いになったのでしょう。それでは以下において、松橋さんとの出会いを通じ、獲得した近代史における知識が、どう展開して行くかに関し、これから書き進めることで、理解して貰うことにしましょう。
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