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「藤原さんへの公開メール」と題されたフリーランス・ジャーナリストーの藤原肇博士(1938年生)と会計士の山根治氏(1942年生)の対話記事を通じて、私たち読者は intelligence のエッセンスを知ることができます。山根治ブログ 2022年4月13日号(http://yamaneosamu.blog.jp/archives/13558083.html)から転載させていただきます。「人生は短く、人為は長く、機会は逃げやすく、実験は危険を伴い、論証はむずかしい。医師は正しと思うことをなすだけでなく、患者や看護人や外的状況に助けられることが必要である」“Life is short, and Art [of medicine] long; the crisis fleeting; experience perilous, and decision difficult. The physician must not only be prepared to do what is right himself, but also to make the patient, the attendants and the externals cooperate.” と例えられるアフォリズムがお二人の交流から伝わります。
コメント・メール(43)です。

 山根治さま

 海外で生活していると、色んな興味深いことに、思いがけない形で遭遇して、異なる経験を持つ人に出会い、新しい地平線を開く上で、役に立つ幸運に恵まれます。パームスプリングに住み、月に数度はロスに行き、取材をしていた30年前に、知り合った日系二世の小田老人は、戦前は米国の公安関係だが、戦後は東京でGHQに勤めた、『スパイ野坂参三追跡』の著者です。
 彼から聞いた話の内容は、内調にいた松橋さんに似て、権力の内側の秘話を含み、ルーズベルト時代の米国に、野坂参三が潜入したり、米国共産党員の日本人の話題でした。それは 宮城与徳とか、北林トモにも繋がり、ゾルゲ事件にも結び付いたので、野坂参三関係の本を読んだら、佐野学が野坂参三の身内だし、後藤新平も親戚でした。
 医者から政界に転じて、台湾の民生長官として活躍し、満鉄総裁を歴任したが、後藤新平は不思議な人で、内務大臣や東京市長をやり、日本人離れした政治家でした。気宇壮大だったから、「大風呂敷」と呼ばれたし、非常に有能であったが故に、首相にならなかったが、個性的な大政治家として、多くの評伝が書かれています。
 それにしても、後藤新平がゾルゲ事件に、間接的に関係していたと、書いている伝記は一冊もないが、それに触れているのは、『皇室の秘密を食い荒らしたゾンビ政体』で、対談相手になった舎人です。この京都皇統の舎人は、これまで正体を伏せて来たが、あえて公表するならば、本名は栗原茂と言って、高松宮の付き人だったし、皇室のお庭番の一人でした。
 彼は1990年代初期から、読者として私に接近し、情報を交換し合ったが、記憶力の凄さにおいて、私が世界で知り合った、記憶力を誇る人の中で、「ピカ壱」と呼べる人物です。特に「有職故事」は抜群で、家督継承や閨閥に関しては、まるで稗田阿礼のように、人名や続き柄が泉の如く、湧き出すように出てくるから、私はいつも唖然としました。
 『皇室の秘密を食い荒らしたゾンビ政体』で、第一章と第三章を読めば、それは推察できますが、歴史についての知識では、大学の歴史学教授以上に、事象に精通していました。また、幅広い人脈を誇っており、渋谷の金沢工業大学では、東京研究室に案内して、私を清水博教授に紹介し、神田の朝堂院大覚の事務所にも、連れて行ったりしました。
 彼の祖父は侠客であり、新門辰五郎と杯を交わし、父親は石鎚山の修験者で、彼自身はお庭番を務め、『世界日報』の編集長参与が、潜入した統一教会の肩書です。彼の正体を隠すために、二人の記者に分割したが、情報を執るために記者になり、時には右翼を装って、街宣車を乗り回すほど、彼の変身術は忍者流でした。
 彼と会うホテルの喫茶室は、半蔵門のグランド・パレスで、公安畑の臭いが強かったし、彼の池袋の事務所では、明電工事件で知られた、中瀬古巧がお茶を入れてくれ、不思議な感じが濃厚です。闇世界や右翼に精通し、五輪誘致やカジノ計画について、石原都政の裏話を物語り、外形標準課税までに触れ、私には興味のない世界まで、教えられたものでした。
 彼との対話をした時に、最も盛り上がった話題は、ヨーロッパの現近代史で、教科書にない秘話には、時間が過ぎるのを忘れ、意見を交換し合いました。そんなある日のこと、金融に関して纏めたから、読んでみて下さいと言って、渡されて厚い草稿には、ウィーン会議の頃から、スイスが果たした役割が、詳細に記述され感嘆しました。
 別のファイルも渡されて、帰宅して読んだ後は、米国で保管して欲しいと、預かった分厚い資料には、大量の公文書が含まれ、「本圀寺関係文書」とあり、M資金絡みのコピーでした。大蔵省の便箋に記された、「還付金償還誓約書」や、「還付金支払保証書」には、首相や蔵相の捺印があり、印鑑証明も添付されて、目を見張るほどの代物でした。
 そこに記された名前は、財界人や政府高官で、膨大な量の印鑑証明は、本物と疑いようがないし、三兆円八千億円の数字も、只ならない金額だから、なぜこんな物がと思いました。そこには自民党のボスが、軒並み名前を連ねるし、驚くべき内容だったので、ジャーナリストの話に仮託して、コピーを『夜明け前の朝日』に、公開してみた次第です。
 しかも、彼の正体は発覚せずに、落合本は舎人の記憶が、文章力に富む落合莞爾の手で、編集と統合がされていて、落合史観が今様「盟神探湯」とは、読者は気づかないのです。それだけに呪祟力は強く、取り扱いで手を抜いて、不用意扱ってしまうなら、その怨念は恐るべきで、祟りが三倍返しだとは、誰も予想しませんでした。
 ところが、出版社の社長が別件で、逮捕されただけでなく、五百日も監獄に収監され、会社が潰されたから、本は絶版で姿を消したし、この件は誰も触れずに、有耶無耶になりました。田中首相の逮捕により、ロッキード事件の実態が、P3C哨戒機にまつわる、兵器疑惑が隠蔽されて、単なる収賄に矮小化され、国民が騙されたのと同じでした。
 念のためにこのコピーは、『日本に巣食う疫病神の正体』に、再掲載しておいたので、新聞記者を舎人に置き換え、ゆっくりと観察すれば、「脱構築」の意味が分かります。事件は表層の事柄で、その真相に迫るには、ゲシュタルトに精通し、ジグゾーパズルの断片で、全体像を組み立てて、ホログラム発想に慣れ、「眼光紙背に徹す」ことが必要です。
 それがインテリジェンスで、情緒的で曖昧さを好む、日本人には苦手でも、それを克服しない限り、「弱肉強食」の世界において、生き延びるのは難しく、訓練を積むことが大切です。それには知識だけでなく、体験を積むことが肝要で、日本的な席次エリートでは、胆力を問われる場合に、実力のなさを露呈して、敗者の立場になるだけです。
 栗原さんの好奇心は、情報や知識だけでなく、行動面でも壮絶であり、どんな分野の人とも付き合い、まるでブラックホールに似て、何でも吸収し尽くすし、時には非常手段までやります。しかも、表には登場しないで、潜行が専らであるのに、コロタイプ版の出版物が、三冊もあるというのは、驚くべきことでもあるし、読み解くのはとても困難ですが、その内容が壮絶なのです。
 『歴史の闇を禊祓う』、『超克の型示し』、『真贋大江山系霊媒衆』は、近代史を知らない一般の人には、難し過ぎる内容であり、理解するのが困難だが、素晴らしいヒントが満載なのです。国粋主義の結晶であり、「落合史観」の精髄が、これらの記述の端端において、読み取ることが出来るし、昭和史の裏を知る時に、思わぬ収穫が期待できるので、副読本としても興味深々です。
 「河豚は食いたし、命は惜しい」で、大衆は毒にやられて、直ぐにいかれてしまうが、ニーチェを読むのに似て、免疫能力さえ強ければ、毒は百薬の長になるし、不老長寿の仙薬に使えます。ニーチェが言った通り、「蝮に噛まれて、死ぬ龍はいない」が、女王蜂に仕える蜂に似て、純粋培養型の日本人は、精神がカラバゴス化して、お花畑を好む体質だから、甘言令色には弱いのです。
 だから、小泉や安倍に騙され、洗脳のしたい放題だし、羊のように隷属化して、暴政が続いたために、思考力を失ってしまい、閉塞感に包まれる中で、抵抗する力さえありません。そんな愚かな環境にあり、山根治さんが奮闘して、愚民路線に反抗しているので、嵐が渦巻く世界の側から、冷徹な風を送り込むために、次回からの記事を利用しながら、「酔生夢死」を破りましょう。

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