労働基準法施行規則第21条では、時間外・休日労働、深夜労働を行った場合の割増賃金に関し、算定基礎賃金対象から除くことができる手当について規定されています。

「法第37条第4項の規定によって、家族手当及び通勤手当の他、次に掲げる賃金は、同条第1項及び第3項の割増賃金の基礎となる賃金には算入しない」(労働基準法施行規則 第21条)

家族手当
通勤手当
別居手当
子女教育手当
住宅手当
臨時に支払われた賃金
1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金

これらは単なる例示ではなく、限定的に列挙されたものですから、これらに該当しない通常の労働時間の賃金は、全て割増賃金の算定基礎とする必要があります。

しかし「残業手当」は、割増賃金の計算単価に算入すると賃金の二重払いになることから、除外することが認められています。

また上記の手当が支払われていた場合でも、実際にこれらの手当を除外するに当っては単に名称によるものでなく、その実質によって取り扱うべきものです(S22.9.13 基発第17号)。例えば、「生活手当等」と称していても、実質的に「家族手当」に該当するものは除外できます。他方、「家族手当」の名称を持っていても、実質的には別ものである場合は、除外されないこととなります。

閑話休題(ソレハサテオキ)。

みなさんの会社は「皆勤手当・精勤手当」を導入なさっていらっしゃいますか?

この取り扱いには、ご注意なさってください。

健康保険法と労働基準法とでその処理が変わるからです。

健康保険では、標準報酬の随時改定の際に「固定的賃金の変動」によって判断し、精皆勤手当は毎月必ず発生するものではないので「非固定的賃金」に区分します。

労働基準法では、精皆勤手当は「臨時に支払われる賃金」ではなく割増賃金の算定基礎に算入するものとします。もし、精皆勤手当を算入しなくてもよいとすると、「基本給16万円、精皆勤手当8万円」のような給与体系にすることにより残業代単価を不当に低く計算することが可能になってしまいます。月160時間労働の会社なら、本来1時間あたり1,875円であるはずの割増賃金を1,250円に減額できることになります。

就業規則に「精皆勤手当については、過去2ヶ月の出勤状況により算定し偶数月に支給する」と定めている会社では、「1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金」にはなっていますが、この精皆勤手当を割増賃金の計算上除外して支払っていると、残業代の一部不払いとして雇用者から請求を受けるリスクを生み出すことになります。

欠勤者が皆無に等しく、入社以来、毎月精勤手当を支払っている雇用者が多数いる会社は、請求を受けるリスクが更に高まります。

ご注意ください。知って備えれば、憂いなしです。

感謝