先月25日、新日本法規出版株式会社は平成18年発行の『Q&A災害時の法律実務ハンドブック』(関東弁護士会連合会編集)の内容をテキストデーターで見る事ができるようにしてくれました。
https://www.sn-hoki.co.jp/shop/zmsrc/qa50593/mokuji.htm
(目次)
第1章 災害対策関係法
1 被災者生活再建支援法
Q1 災害時に適用される法律
Q2 被災者生活再建支援法
Q3 通常法規における法定期間等に関する取扱い
2 災害復興基本法
Q4 災害復興に関する基本法
Q5 災害復興基本法に盛り込むべき内容
第2章 建物と境界に関する問題
1 土砂崩れと境界
Q6 土砂崩れにより隣地との境界が分からなくなった場合
Q7 震災により周辺の土地にゆがみが生じた場合
2 建物、施設の倒壊
Q8 震災によりブロック塀が倒れ、隣家を壊した場合の責任
Q9 震災により倒れたブロック塀に手抜き工事の疑いがある場合
Q10 震災のため倒れた塀を新たに建て直す場合
3 倒壊建物の解体
Q11 震災後の解体工事が遅れているとき
Q12 震災後の修繕工事に不満がある場合
Q13 震災前からの工事が震災の影響を受けた場合
4 マンションの修理と建替え
Q14 マンションが被災した場合の対処
Q15 被災マンションの修繕、小規模滅失の復旧
Q16 大規模滅失とその復旧
Q17 被災マンションの建替え決議の手続
Q18 マンションの建替え不参加者に対する買取請求
Q19 マンション建替えの実行手続
Q20 マンションの建替えと抵当権などの取扱い
Q21 団地型マンションの損壊、一部滅失の問題点
Q22 団地型マンションの建替え手続
Q23 全部滅失の場合のマンションの再建手続
Q24 耐震強度偽装事件について
Q25 耐震強度の偽装があった場合の紛争解決
Q26 耐震強度の偽装があった場合の責任追及
5 建物の瑕疵
Q27 震災により購入した建物の壁に亀裂が入った場合の責任追及
Q28 震災により建て替えた建物が傾いてしまった場合の責任追及
Q29 平成12年4月1日以降に契約した建物の瑕疵担保規定の特例(住宅品質確保促進法)
Q30 瑕疵担保責任を追及するための「瑕疵」
Q31 建築紛争の解決手段
第3章 借地借家に関する問題
1 建物が滅失した場合の借地権
Q32 借地上の建物が地震で全壊した場合の借地権
Q33 借地上の建物が地震で全壊した場合の建物の再築
Q34 借地上に再築した建物の借地期間
Q35 地震で一部損壊した借地上の建物の修理
Q36 借地上の建物が地震で全壊した場合の借地権の対抗力
Q37 借地上の建物が地震で全壊した場合の建物に設定された抵当権
Q38 再築建物について締結した定期借地契約の効力
Q39 借地上の建物が地震で全壊した場合の地代の減額
Q40 地震で損壊した借地の復旧工事の負担者
2 建物が滅失した場合の借家権
Q41 震災で借家が滅失した場合の賃貸借契約
Q42 避難勧告が出て借家に住めない場合の家賃の支払
Q43 震災で借家が損壊し、家主から退去を求められた場合
Q44 震災で借家が損壊した場合の修理要求
Q45 震災で借家が損壊し、家主から修理中の一時退去を求められた場合
Q46 震災で借家が損壊し、修理中の仮住まい等の費用
Q47 震災で借家が損壊したときは修繕する旨の特約がある場合
Q48 居住不能となったときは敷金を返還しない旨の特約がある場合
3 罹災都市借地借家臨時処理法
Q49 罹災都市法の制定経緯
Q50 罹災都市法による借地権、借家権の保護
Q51 地震で建物が滅失した場合の借地人の保護
Q52 震災時借地権の残存期間が短い場合の借地人の保護
Q53 建物が滅失した状態での借地権の譲渡と土地所有者の承諾
Q54 土地所有者からの催告による既存借地権の消滅
Q55 罹災都市法上の借家人の保護
Q56 土地所有者に対する借地権設定の申出
Q57 借地権取得の申出権者とその相手方
Q58 敷金の返還を受けたときの借地権取得
Q59 優先借地権の申出
Q60 優先借地権の申出の要件
Q61 優先借地権を土地所有者が拒絶できる場合
Q62 優先借地権の取得時期
Q63 優先借地権の権利内容
Q64 優先借地権と法定地上権の関係
Q65 借地権譲渡申出権の成立要件
Q66 罹災都市法3条の借地権の譲渡が認められた場合の借地条件
Q67 土地所有者による優先借地権の消滅請求
Q68 優先借地権の消滅
Q69 複数の借家人がいる場合の優先借地権の範囲
Q70 複数の借家人間における優先借地権取得の優先関係
Q71 優先借地権が競合する場合の裁判所による割当て
Q72 優先借家権取得の要件
Q73 優先借家権者に対する建築主からの催告
Q74 中高層建物が再築された場合の借家申出
Q75 複数の優先借家権申出があった場合における優先借家権と他の借家権との関係
Q76 裁判所への申立て方法
第4章 財産、保険、生活に関する問題
1 財産管理、相続
Q77 行方不明者の財産管理
Q78 行方不明の場合の相続
Q79 死亡者の財産管理
Q80 死亡の先後が分かる場合の相続
Q81 同時死亡した場合の相続
Q82 人身傷害に対する損害賠償
Q83 震災で権利証を消失してしまった場合
Q84 震災で登記識別情報が分からなくなってしまった場合
2 生命保険
Q85 生命保険の仕組みと保険証券の紛失
Q86 保険金の請求手続
Q87 保険金の受取人が死亡した場合
Q88 保険料が支払えない場合
3 損害保険
Q89 地震保険と火災保険の関係
Q90 地震保険の対象
Q91 地震保険で支払われる保険金
Q92 地震保険の保険金額
Q93 全損・半損・一部損の判断
Q94 同一敷地内の母屋と物置を対象とした地震保険契約
Q95 地震保険の保険金を受け取る方法
Q96 地震保険の保険金受取り後の保険契約
Q97 マンションの所有者が結ぶ地震保険契約
Q98 警戒宣言発令後の地震保険加入
Q99 罹災証明、被災建築物応急危険度判定
4 住宅ローン
Q100 既存住宅ローンの金利の減免、支払猶予
Q101 震災により倒壊した場合の抵当権、住宅ローンの期限の利益の喪失等
Q102 住宅の再建、補修のための公助制度、共助制度
Q103 住宅の再建のための新規融資等
5 建物の修理等に関するトラブル
Q104 震災後に修理業者と法外な値段の契約を結んでしまった場合(訪問販売とクーリング・オフ)
Q105 震災後の屋根瓦補修工事に関するトラブルと注意点
Q106 震災後に頼んでもいない商品が送られてきた場合(ネガティブ・オプション、送付け商法)
Q107 震災後に必要のない浄水器を購入してしまった場合(点検商法)
Q108 高齢者を狙った震災後の悪徳商法
第5章 営業に関する問題
1 金融取引
Q109 地震時の手形交換所の特例と最終処理
Q110 手形決済ができない場合
Q111 通帳、カードの紛失
Q112 小切手の発行と銀行の営業停止
Q113 銀行の営業停止
Q114 震災時の手形の支払呈示
Q115 手形・手形帳の行方不明
2 商取引
Q116 リース物件の滅失
Q117 株券の紛失
Q118 ITインフラの破壊の影響
3 震災に起因する倒産
Q119 被災により債務の返済が困難になった場合〈1〉
Q120 被災により債務の返済が困難になった場合〈2〉
第6章 雇用に関する問題
Q121 震災を理由とした採用内定の取消し
Q122 震災を理由とした労働者の欠勤
Q123 震災を原因とした欠勤による労働者に対する不利益処分
Q124 震災でケガをした労働者が休職扱いになった場合
Q125 震災のため給与の支払が困難な場合
Q126 震災と給料支払の前倒し
Q127 震災のため時間外労働や休日出勤を命じたい場合
Q128 一時帰休(レイオフ)を命じられた場合
Q129 震災による会社の資金繰りが悪化した場合の労働者の解雇
Q130 震災による会社の倒産した場合の労働者の解雇
Q131 業務中に被災しケガをした場合
Q132 通勤中に被災した場合
Q133 通勤中に被災し、救護活動中にケガをした場合
Q134 通勤中ないし業務中に被災し、労災保険の給付を受けられる場合の給付内容
第7章 税金に関する問題
Q135 被災者に対する租税の減免措置〈1〉
Q136 被災者に対する租税の減免措置〈2〉
Q137 被災者に対する租税の緩和措置
第8章 環境に関する問題
Q138 建物解体時のアスベスト問題
Q139 工場等から有害物質が流出した場合
Q140 倒壊した隣地建物の撤去
第9章 支援を必要とする人に関する問題
1 高齢者、障害者への支援
Q141 地域防災計画
Q142 地域防災計画における災害時要援護者への配慮
Q143 要援護者の個人情報の第三者提供
Q144 倒壊した有料老人ホームからの入居保証金の返還
Q145 高齢者円滑入居賃貸住宅に登録した住宅の家賃債務保証制度
Q146 避難先での介護保険の利用
Q147 年金担保貸付、災害支援制度
Q148 災害時要援護者への支援
Q149 災害時要援護者に対する避難情報
Q150 災害時要援護者の把握
Q151 避難所における災害時要援護者支援
2 外国人への支援
Q152 震災で負傷し、家族による長期看護が必要になった場合
Q153 震災によるパスポートの紛失
Q154 震災により在留期間の更新期限を徒過した場合
Q155 留学生に稼働する必要が生じた場合
Q156 震災により帰国する場合の支援
Q157 震災後のオーバーステイ
Q158 震災により解雇された場合の雇用保険給付
Q159 在留資格がないときの外国人の生活保護
Q160 震災により負傷し治療を受けた場合
Q161 震災により本人または親族が死傷した場合
Q162 震災により住居が消失してしまった場合
Q163 震災に伴う義捐金の受給
Q164 在留資格がない場合の相談先
Q165 日本語が分からないときの通訳の依頼
Q166 震災時における外国人が受ける不利益
Q167 震災時における外国人の安全確保
3 子どもに対する支援
Q168 被災時の子どもの引渡し
Q169 震災後の休学、転入学などの取扱い
Q170 震災により両親を失った場合
第10章 弁護士等の役割
1 日本弁護士連合会および関東弁護士会連合会の施策
Q171 日本弁護士連合会および関東弁護士会連合会の施策
2 弁護士、まちづくり支援機構の役割
Q172 阪神・淡路まちづくり支援機構
Q173 発災前のまちづくり支援機構の設立
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震災復興の一助として役立つことはいうまでもなく、企業の社会的責任のお手本として記憶にとどめたいものです。新日本法規出版株式会社の高い見識と胆識(勇氣)を賞賛します。是非ご一読を。

閑話休題(ソレハサテオキ)

震災により事業年度の終了後3か月以内に必ず定時株主総会を招集できなくなった場合、会社法違反にならないが、定款違反になるのではないかとのお問い合わせをいただいておりました。定款に有事を想定し総会に関して利害関係者の権利を不当に侵害しない範囲で例外的取扱いを許容する条項が含まれている組織の監査役の方は、左程悩むことがなかったようです。取締役の意思決定が「法令定款違反」に該当しないのかどうか監査対象になるのではないかとのお問い合わせもいただきました。

先月29日に、法務省より意見が公表されました。

定時株主総会の開催時期に関する定款の定めについて
東北地方太平洋沖地震の影響により,定款所定の時期に定時株主総会を開催することができない状況となっている株式会社があると考えられます。
特定の時期に定時株主総会を開催すべき旨の定款の定めについては,通常,天災等のような極めて特殊な事情によりその時期に定時株主総会を開催することができない状況が生じた場合にまで形式的・画一的に適用してその時期に定時株主総会を開催しなければならないものとする趣旨ではないと考えるのが,合理的な意思解釈であると思われます。
したがって,東北地方太平洋沖地震の影響により,定款所定の時期に定時株主総会を開催することができない状況が生じた場合には,会社法第296条第1項に従い,事業年度の終了後一定の時期に定時株主総会を開催すれば足り,その時期が定款所定の時期よりも後になったとしても,定款に違反することにはならないと解されます。
http://www.moj.go.jp/hisho/kouhou/saigai0012.html

以下は、先月25日公表の法務省意見

定時株主総会の開催時期について
 東北地方太平洋沖地震の影響により,当初予定した時期に定時株主総会を開催することができない状況となっている株式会社があると考えられますので,会社法の関連規定について,以下のとおりお知らせします。
 会社法第296条第1項は,株式会社の定時株主総会は,毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならないものと規定していますが,会社法上,事業年度の終了後3か月以内に必ず定時株主総会を招集しなければならないものとされているわけではありません。
 東北地方太平洋沖地震の影響により,当初予定した時期に定時株主総会を開催することができない状況が生じている場合には,そのような状況が解消され,開催が可能となった時点で定時株主総会を開催することとすれば,上記規定に違反することにはならないと考えられます。
 なお,議決権行使のための基準日を定める場合,基準日株主が行使することができる権利は,当該基準日から3か月以内に行使するものに限られます(会社法第124条第2項)。したがって,定款に定められた基準日から3か月を経過した後に定時株主総会が開催される場合に,議決権行使の基準日を定めるためには,当該基準日の2週間前までに,当該基準日及び基準日株主が行使することができる権利の内容を公告する必要があります(会社法第124条第3項本文)。
 また,定款に剰余金の配当の基準日を定めている場合に,その基準日株主に剰余金の配当をするためには,当該基準日から3か月以内の日を効力発生日とする剰余金の配当に係る決議(会社法第454条第1項等)をする必要があります。
http://www.moj.go.jp/hisho/kouhou/saigai0011.html

ところで、会社法上の定款を会社と株主の双務契約と見た場合は、天変地変等の不可抗力や第三者の行為は、契約の「合理的な解釈」の問題とせずに、「危険負担」の法理によって対処しても良いのではないでしょうか。

民法第534条(債権者主義)
特定物に関する物権の設定又は移転を双務契約の目的とした場合において、その物が債務者の責めに帰することが出来ない事由によって滅失し、又は損傷したときは、その滅失又は損傷は債権者の負担に帰する。

民法第536条(債務者主義)
前二条に規定する場合を除き、当事者双方の責に帰することができない事由によって債務を履行することが出来なくなったときは、債務者は反対給付を受ける権利を有しない。
2)債権者の責に帰すべき事由によって履行をすることが出来なくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利をわない。この場合において、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。

定款において、例外的取り扱いの許容を認めないとしている会社は無いと思われます。株主の権利行使として開催時期を延期することが適切であると認められる事情があるなら、開催時期の変更は許容され、定款に違反しないと見ることができます。

感謝