「藤原さんからのコメント・メール」と題されたフリーランス・ジャーナリストーの藤原肇博士(1938年生)と会計士の山根治氏(1942年生)の対話記事を通じて、私たち読者は intelligence のエッセンスを知ることができます。 山根治ブログ2024年2月5日号http://yamaneosamu.blog.jp/archives/23370132.html)から転載させていただきます。「人生は短く、人為は長く、機会は逃げやすく、実験は危険を伴い、論証はむずかしい。医師は正しと思うことをなすだけでなく、患者や看護人や外的状況に助けられることが必要である」“Life is short, and Art [of medicine] long; the crisis fleeting; experience perilous, and decision difficult. The physician must not only be prepared to do what is right himself, but also to make the patient, the attendants and the externals cooperate.” と例えられるアフォリズムがお二人の交流から伝わります。
コメント・メール(83)です

 山根治さま

 英語版の『ドームゲート物語』を仕上げ、米国のAmazonで出版するのに忙しく、寄稿が遅れましたが2023年は多作の年でした。米国での発売手続きが終わり、ついでに日本のAmazonでも読める手配も完了しました。また、本稿までの記事は纏めて、『ゾンビ政体の断末魔と迷走するウクライナ戦争』の題で、アマゾンの電子版に公開してあり、携帯で読めるし聞けます。 
ゾンビ政体の断末魔と迷走するウクライナ戦争
ドームゲート物語

 そこで、英語版の「Preface to the 2023 English edition」をAmazon.jpの「内容紹介」に、以下のように和訳して掲載しておきました。
 <・・・・・・TALE OF DOMEGATEは、1984年に日本で出版された『ドームゲート』の英訳で、カナダ最大の独立系石油会社ドーム石油が、誕生から発展を経て終焉までを描いたドラマだ。
 日本では調査報告書が単行本化され、多くの雑誌で取り上げられ、国会では特別委員会が設置されたし、石油公団の解体に繋がったが、英訳されることはなかった。著者が英訳しなかった理由は、米国での石油開発事業が忙しく、家族がカナダに住んでいたからだ。
 約40年ぶりに英訳した理由は、21世紀に入り資本主義が死の病を患い、多くのビジネスが強欲に毒され、資本主義の精神を失ってしまった。そして、かつては一部の詐欺師が密かに、時には公然と行なっていたが、米国の証券市場が鉄火場化し、そこに中国企業が雪崩込んだので、詐欺ビジネスが一般化したからだ。
 経済学までが詐欺に毒され、企業の資産価値の評価が人気に基づく虚構に支配され、社会への貢献度や製品の品質による、真の価値と無関係になって、株価の上昇により時価総額が決まり、経済活動がギャンブル化した。
 アングロサクソンとチャイニーズは世界一のギャンブラーで、両国はフォン・リッパー男爵に学び経済大国となり、GNPで世界第1位と第2位だし、彼らは「ネズミ講」の名人的な使い手だ。「ネズミ講」は先に借金をした者に、後で加わった者が支払うシステムで、米国ではAGI、石油会社のエンロン、中国ではHNAグループ、清華ユニグループ、常浪集団などが悪名高い。
 本書を読むだけで、これから次々と始まる株式市場の錬金術が、21世紀の世界恐慌の主人公になると実感して、ドームゲートの教訓を思い出し、相似でも合同でないと気づくはずだ。なにしろ、「歴史は同じように繰り返さないが、韻を踏む」のであり、韻の踏ませ方の才能と技巧が、偉大な詩人とヘボ詩人の実力の差になる。
 文明のレベルで観察すると、資本主義はすべての生き物と同じで、生成、発展、衰退というライフサイクルを持ち、破滅に至るパターンを示す。また、資本の側面から見れば、投資経済、投機経済、ネズミ講経済の3段階が読み取れ、これを人生に当てはめれば、スフィンクスの謎かけに似て、「初め四本、次に二本、最後に三本なーに」である。
 『オディプス』は悲劇の傑作だが、それを生涯かけて作品にしたのは、トルストイの大作に見る通りで、自伝としての『幼年時代』『少年時代』『青年時代』に始まり、人生行路の発展と衰退を描いた、『戦争と平和』と『アンナ・カレーニナ』がある。
 本書を読破した読者の中に、『戦争と平和』と『アンナ・カレニーナ』を読み終え、それに似た韻の存在を感じ取った人がいたら、半世紀後に復刻した著者として嬉しい限りだ。というのは、ドームゲートの物語の舞台は、私の最盛期だった時代であり、アンドレイ侯爵とナターシャの物語に似た、甘く切ない思い出が慕情として漂う。
 ドーム石油が絶頂期を迎えていた、1973年前半の段階で石油はバーレル1ドル半ばで、買い手市場だったが同年秋には、第四次中東戦争で石油は四倍になり、全世界がショックに見舞われた。また、1979年にイラン革命があり、石油は更に四倍に暴騰したが、ドーム石油は破綻に瀕し臨終を迎えていたし、時代はオイルピークを迎えて、天然ガスが主役になりかけていた。
 現在は資本主義体制の末期であり、情報革命が進展する中でシンギュラリティの到来を前に、巨大なパラダイムシフトが進んでいるし、世界情勢が混沌としている中で、未曾有の破断界を迎えようとしている。本書で取り扱う主要テーマは、統治機構としての国家が、腐敗によって機能不全に陥っており、ゾンビ政体化する日本を「離見の見」から眺めた観察記だ。それと共に共時性を持って進行した、ウクライナ戦争を遠望して、観察した転換期の記録であり、パラダイム・シフトが進む中で、日本が体験した病理のカルテでもある。
 本書で取り扱う隠れた主要テーマは、統治機構としての国民国家が、進路を見失って暴政を当たり前と思い込み、腐敗で機能不全に陥る時に、ゾンビ化することへの警鐘だ。それがネオコンの横行により、カラー革命を蔓延させて、ウクライナ戦争やガザ紛争にまで発展し、日本、米国、中国、欧州などが、ソフトな全体主義に席巻されかけている。
 日本の状況はタブーに包まれて、世界にほとんど知られておらず、それに関してはアマゾンの電子版で読めるので、『Divine Retribution』を参照されたい。パラダイム・シフトが進む中で、世界が体験中の病理のカルテは、暇を楽しむ趣味を持つ人には、秘密のダイアグノシスとして興味深いだろう。>
 これを読めば分かるはずだが、現在の世界はポンジ経済化して、ほとんどのビジネスが借入金超過であり、償還期限が来ても元本はもとより利息も支払えない状態で、債務超過で倒産状態が蔓延している。このケースを創業から倒産に至るまで、克明に観察した記録が本書であり、半世紀前の仕事として私は残していたから、今を知るのに参考になると考え英訳し世界の読者に届けたのです。
 これで一段落したので、これからはゾルゲを中心にして、インテリジェンスとスパイの問題について、論じていくつもりです。
(注1) 文中の「フォン・リッパー男爵」とは 「Baron Von Ripper-off」のことで、『ぼったくり男爵』と和訳されることが多い言葉。
(注2) 「歴史は同じように繰り返さないが、韻を踏む」は、合衆国の作家 Mark Twain (1835〜1910)の「The past does not repeat itself, but it rhymes.」のこと。
(注3) 「ポンジ経済化」とは、破綻して被害が出ることが分かっていても突き進む経済のこと。現代ビジネス社会が資金をポンジスキーム(Ponzi scheme)で運用することに鈍感になり、病膏肓に入ってしまったことに起因する。この手口は、高配当を謳い文句として、多くの資金を集める投資詐欺であり、合衆国で天才詐欺師と言われたチャールズ・ポンジ(Charles Ponzi:1882〜1949)に由来する呼称。魅力的な投資対象での運用で定期的に高配当を支払うと言って多額の資金を集める一方、実際の運用はなく、新しい出資者からの出資金を配当として支払いながら、破綻することを前提にお金を騙し取る手口。一般には、自転車操業を行って、後から参加する出資者から集めた資金を、以前からの出資者に配当と偽って渡すことで、あたかも資金運用によって利益が生まれ、その利益を出資者に配当しているかのように装うものだから、当然、最終的には破綻し、大きな被害をもたらす仕組みとなっている。(以上)
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