「藤原さんからの公開メール」と題されたフリーランス・ジャーナリストーの藤原肇博士(1938年生)と会計士の山根治氏(1942年生)の対話記事を通じて、私たち読者は intelligence のエッセンスを知ることができます。 山根治ブログ2024年9月3日号(https://yamaneosamu.blog.jp/archives/25441370.html)ら転載させていただきます。「人生は短く、人為は長く、機会は逃げやすく、実験は危険を伴い、論証はむずかしい。医師は正しと思うことをなすだけでなく、患者や看護人や外的状況に助けられることが必要である」“Life is short, and Art [of medicine] long; the crisis fleeting; experience perilous, and decision difficult. The physician must not only be prepared to do what is right himself, but also to make the patient, the attendants and the externals cooperate.” と例えられるアフォリズムがお二人の交流から伝わります。
コメント・メール(95)です
山根治さま
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前回のコメント・メール(94)に、伝記や評伝との関わり合いとして、モンテーニュの『随想録』に関して書くと予告したが、大兄の公開メール136には、岡本秀樹のリベート問題が書いてあった。そこで急遽に予定変更し、伝記に関しての見解は後で論じることにして、今回は岡本のリベートを中心に、ODA資金のピンハネ問題に触れ、自民党の裏金作りの謎を明らかにする。
発展途上国のビジネスでは、取引に際してのワイロが普通で、現在はコンサルタント料と呼び、商取引上の経費に見せかけるが、実態は昔の「袖の下」であり、自民党議員の主要資金源になってきた。それが経済援助外交で、ODA(公的開発援助)と呼ぶ計画を使い、自民党政府のトップたちが、援助資金の中抜きに参加し、リベートを着服したのであり、この秘密はアンタッチャブル領域だ。
普通は極秘で門外不出だが、間に入る者が未熟なら、極秘情報でも流出するのであり、三菱商事側は機密厳守しても、訓練不足の空手教師の頭では、その辺の情報管理がデタラメになる。そこで資金に窮した岡本が、公益財団理事長で公認会計士の大兄に、借金の相談をするに際して、秘密計画の内容を打ち明け、三菱商事に連れて行ったので、担当の事業部長が愕然としたのだった。
この話を電話で聞いた私は、大兄に証拠資料の提供を頼み、送付された資料をチェックし、本に公開して告発する上で、何をすべきかを検討する時に、原資料の存在が決め手になる。それは考古学的な調査で、発掘した遺物の存在形態や、年代推定の科学的検証法に、何を使用したかが大切であり、地質調査で訓練をした私には、犯行現場での鑑識に似た手続きでお手の物だ。
アフリカで資源開発をやり、商社マンの仕事をこなし、詐欺師の天国の米国では、石油ビジネスをやったお蔭で、十件以上の訴訟を体験して、悪党を征伐した経験のために、私は高い授業料を払っていた。だから、経済援助の名目で形を整え、ODAで税金をばら撒くシステムを使っても、政治家が裏金を作る時に、ワイロを貰う者が仲間に加わると、「土手の一穴」で水漏れが分かる。その一例が次のコピーで、三菱商事の秘密文書に重機部の平木部長のサインと共に、ワイロ支払い確認契約として、岡本秀樹に宛てた文書が、1983年1月28日付けで出ており、それが証拠として決め手になる。(大兄が詳細を解説済み)
事業計画は「ベネスエフ・セメント工場」で、建設費用は459億円であり、日本政府負担(円借款375億円)とエジプト政府負担(75億円)だし、受注会社は本契約の三菱商事とメイカーの神戸製鋼の名がある。また、岡本のコミッションは1%の約3億7500万円で、受取時点は1986年12月までになっている。
これだけの基礎資料があれば、有能なジャーナリストなら、背後関係について調べて、犯罪の人脈図を作り上げ、スキャンダルを暴露できるし、立派な調査報道が完成するはずだ。私が知る限りにおいて、商工族の渡部恒三代議士が、外務省の三宅和助と共に、中東やアフリカ利権の周辺で動き、その名を耳にしていたし、拓殖大や国士館大のOBも、手先として現地で動いていた。
その中の現地要員として、岡本秀樹がいたと思うが、その仲間に小池百合子がおり、カイロに陣取っていたなら、人脈図を組み上げる時に、朝堂院大覚が決め手になるだろう。しかも、小池百合子の兄の勇が、ODA担当窓口役として、カイロに常住していたし、その後はアフリカ利権にも関わり、組織の理事をやったから、小池一家は家族総出だったのだ。
しかも、百合子は枕稼業の他に、エジプトの情報機関と結び、日本では出世街道を歩み、国会議員や都知事までやり、日本人の税金をばら撒き、コンプラドールとして活動した。その点に関しての情報は、山根さんの関係筋の方が、私よりも詳しいはずだから、次回に教えて貰うことにして、私としては利権と絡む形で、政治にまつわる裏金を論じてみたい。
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政治には機密費が伴い、その捻出に悪知恵をしぼり、色んな裏金作りが行われ、戦前は武器の横流しを始め、アヘンなどの麻薬の密売が、軍部や闇商人の手によって、極秘裏だが大規模に行われた。その代表が満州人脈によるアヘン取引で、関東軍の東条英機と組み、満州国の超官僚の岸信介が、宏済善堂の里見甫と共に、日中戦争をアヘン戦争にと変貌させていた。
それが外務省の極秘電報で、その戦後版が経済援助として、M資金による経済復興に続き、ODAの海外援助となり、自民党の裏金作りを通じ、55年体制を維持し自民党の長期政権を支えていた。これが日本の政治史の闇で、その謎の解明を試みた私は、何冊かの近現代史の本を書き、歴史の証言を残してきたが、その骨格を形成したのは、証拠としての機密文書だった。
『インテリジェンス戦争の新時代』では、外務省の極秘電報のコピーが、42頁から49頁まで掲載され、『日本に巣食う疫病神たちの正体』にも、数兆円のM資金の関係者名が、大蔵省の公文書に書いてある。しかも、印鑑証明付きであるから、ガセネタでないのは明白で、こうした証拠を伴う以上は、歴史の資料として役に立ち、犯罪行為は立証されるのである。
ただ、問題は検察当局の姿勢で、現在の日本の腰抜け検察は、政府と癒着し権力犯罪に対し、メスを入れる正義感がなく、証拠が揃っても告発せずに、巨悪はしたい放題であり、高鼾の状態が罷り通る。オリンピック利権で汚れた森喜朗は、起訴さえもされていないし、学歴詐称や選挙違反の小池百合子も、元特捜検事が告発したのに、検察当局は調査を先送りして、サボタージュを続けている。
国内レベルでの議論では、パーティー券を使った裏金作りや、小池百合子の学歴詐称で、枝葉の事件に大騒ぎをしているが、「木を見て森を見ない」近視眼であり、問題はそんなチンケな事柄ではない。なにしろ、第二次安倍政権の八年間で、安倍首相は62兆円をODA絡みで、税金を派手にばら撒き、その一部をワイロの形で中抜きし、オフショアの銀行口座に貯め込んでいる。
その手口は戦時賠償の名で、有償無償の援助政策として、自民党が利用した手口であり、その典型がインドネシアを舞台に、岸信介が巧妙に作り上げた、商工省(MITI=通産省)を活用した裏ガネ作りだ。石油問題が分かる新聞記者は日本に皆無で、50年前から調査し判断して、その問題を幾ら指摘しても、私の著書を更に掘り下げて、追及することがなかったから、百鬼夜行で魑魅魍魎の天国だ。
ジャーナリストとして私は、キャリアの前半の時期に、石油公団の乱脈に対して、血税の無駄使いとして鉄誅を加え、その一つが『Tale of Domegate』だが、これは私の修行になった。田中角栄や中曽根康弘が、石油の利権に食いついて、日本のエネルギー政策に、大きな打撃を与えたけれど、その犯罪を告発しないまま、現在の亡国日本を招いてしまった。
日本のジャーナリストで、世界を舞台に活躍するのは、現象の現場報告を主体にし、簡単に物量の比較で済む、戦争のように分かりやすい、精緻な構造分析が無用な素人向けのものだけだ。複雑な構造と機構を解明し、緻密な理論構成が必要な、理知的な問題に挑むより、右脳が得意な感情と結ぶ、興奮を伴う事件物を好み、日本のジャーナリズムは、答えのない問いには挑まない。
その一例が国家予算であり、一般会計を国家予算と呼び、これを日本では国会で審議し、国家運営の基礎を置くが、実は別に特別会計があって、財政投融資と名付けられ、一種の裏金の機能を果たす。2023年度の一般会計は、約114.4兆円の規模で、過去最高額を更新しているが、税収は約72.1兆円と予測され、これも歴史的な高水準で、特別会計は年々変動しても、相対的に大きな規模を維持する。
しかも、特別会計は独立採算制で、公団や政府の事業団などが利用し、天下り役人の財布であり、その歳入は特定の税収や財政投融資を始め、政府資金や特別公債などで、資金管理や収支損益は不明瞭だ。また、一般会計は百兆円余りだが、特別会計は二倍程度もあり、国会での審議の対象ではなく、財政投融資の名の下に、各官庁の役人の采配で、勝手に使われる裏資金でもある。
ODAは特別会計から出て、日本最大の裏帳簿であり、そこに触れるのはタブーで、それを問題視した石井紘基議員は、右翼を自称する男に刺され、自宅の前で暗殺されている。彼が暗殺された2002年度は、一般会計の規模は81兆円で、特別会計は200兆円だが、財務省は特別会計は、数字を公開しないから、族議員と官僚族にとって、「打ち出の小槌」に等しい宝箱だ。
日本のジャーナリストに、これから問われる課題は、安倍がばら撒いたODAが、どんな形で中抜きされて、62兆円の血税が消え、安倍家の資産に化けたかで、その徹底追及が不可決である。満州の亡霊は生きており、それがゾンビ化した議員で、統一教会に汚染された自民党が、解体されない限り明るい未来は訪れないし、それが日本の再生の唯一の道になる。
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