【新刊のご案内】『天空の主権』(Kindle版)の紹介が、noteに掲載されました。転載させていただきます。

私たちの知的好奇心を刺激する一冊が、藤原肇博士の新刊『天空の主権』です。noteに掲載された紹介記事からは、本書が描く壮大なテーマや、私たちが今知るべき重要な示唆が垣間見えます。ぜひじっくりとお読みいただき、この世界を新たな視点で見つめるヒントを見つけていただければ幸いです。

特に憲法記念日を迎えた今日、平和への願いを新たに心に刻み、私たちの立つ世界について深く考える上で、本書は多くの示唆を与えてくれるはずです。
【ご案内】
2025年4月25日(金)、藤原肇博士による新刊『天空の主権』(Kindle版)が刊行されました。Kindleでの出版は、昨年の『ゾンビ政治とポンジ経済の劇場』以来、久しぶりのリリースとなります。

本書の後半部には、生成AIとの問答が収められており、その内容は非常に示唆に富んでいます。博士ご自身も、本書の刊行にあたり「21世紀の『プラトンの対話編』の風味を感じていただければ嬉しい」とコメントされています。
天空の主権_藤原肇博士
『天空の主権』の表紙

Amazonに掲載されている本書の紹介文を以下に転載します。
私が中学生活を送ったのは、今からおよそ75年前。地理や歴史、そして科学や技術を通して、社会と自然の構造を学ぶ教育環境がまだ残っていた時代である。地質学を志した私は、地形の背後に潜む「地質構造」の決定的な意味に強く惹かれ、人類の営みと自然環境との相互作用に関心を深めていった。

日本国内の現地調査に加え、フランス留学を経て欧州・中東・アフリカに渡る中で、地政学という学問の基本枠組みに出会った。マッキンダーの「ハートランド」論、マハンの「シーパワー」理論といった古典的地政学は、かつて帝国主義的秩序を支える戦略の柱であった。だが20世紀後半、その前提は大きく崩れ始める。

航空機の登場によって「空」が新たな戦略空間として加わり、ドゥーエの制空権理論が示したように、軍事と政治の重心は地表から上空へと移動し始めた。さらに情報革命はその動きを加速させ、人工衛星、インターネット、AIといった技術が、地政の焦点を「場所(トポス)」から「情報(ロゴス)」へと根底から転換させたのである。

本書『天空の主権』は、こうした地政学の変容を背景に、21世紀の新しい戦略概念として「アストロポリティックス(宇宙地政学)」を提示するものである。人工衛星が全地球をリアルタイムで監視し、ソフトウェアが仮想空間に新たな勢力図を描く時代に、戦略の主役はもはや「地」ではない。AIが演算する情報が、国家の判断を左右し、外交や軍事を動かす「天空のインテリジェンス」が、現代の主権を形作っているのだ。

従来の地政学では、リーダーに求められる人的資源、特に「ソフトウェア」としての知性や経験、判断力といった人間的要素の価値が十分に評価されてこなかった。そこで本書では中盤において、国際経験に富む対話者たちとの議論を通じて、真のリーダーシップに不可欠な「インテリジェンス」とは何かを掘り下げている。

「制空権」が戦争の鍵となったように、「制宇権(space dominance)」は、今や経済、文化、政治にまで影響する時代を迎えている。本書では、かつての地政学が辿ってきた歴史を丁寧にふり返りながら、エアパワー、サイバー空間、人工衛星の登場がどのように「主権」という概念を変質させたかを解き明かす。

加えて、国際舞台で出会った多くの対話者たちとの議論を通じて、「天空から地球を見直す」視点を浮き彫りにする。グローバル化とローカル性が交錯し、ミクロなデータがマクロな政治を動かす時代に、私たちはいかなる知と視野を持つべきなのか。
さらに終章では、AIとの対話を実際に行いながら、知識を集積・演算するAIに対して、人間が持つ「知恵」の本質的価値を問い直す。果たして、人間の思考と直観は、AI時代においてどのような意味を持ちうるのか――この問いは、技術の未来を考える上で避けて通れないものである。

本書は、技術の進歩によって再構築されつつある「空間の支配」と「主権の意味」を、地政学からアストロポリティックスへと読み解く、新しい地政の思索である。




c1561bd8