
11月の淡い光が伊勢志摩の海をゆっくりと照らす頃、この地で第44回全国豊かな海づくり大会が開かれ、天皇皇后両陛下がご臨席になりました。三重県での開催は昭和59年以来、実に40年ぶりです。
当日の陛下のおことばを拝読すると、伊勢湾や熊野灘、そして志摩の海と共に生きてきた人々の時間が、静かに蘇ってくるようでした。
■ 海が育んできたもの
水問題の研究をライフワークにしてこられた陛下は、記念講演「人の心と水」で、
「人の水への想いは、時間と距離を超え、アジア太平洋地域に生きる私たちの共感と連帯の土台を形作ってきた」
と述べられています( → 過去記事 )。
今回のおことばを読みながら、
海は単なる生産空間や観光資源ではなく、
人間が自然とつながりを取り戻す場所
であることを再び思い起こしました。
■ 気候変動の時代に
今日の漁業は、気候変動・高水温・資源減少という大きな環境変化と向き合っています。
陛下は、その現場に寄り添うように、
・イセエビやハマグリの資源管理
・真珠・魚類養殖の新技術開発
・栄養塩問題への対応
・藻場・干潟の再生
といった三重県の取り組みを取り上げられました。
そして、「未来に手渡すための営み」の大切さを強調されました。
資源を使うだけでなく、どう“返していくか”。
その感覚を地域社会が共有しない限り、美しい海は守れません。
■ 東日本大震災から15年へ──両陛下の来春訪問の報
この「継承」というテーマは、もう一つのニュースと深く響き合います。
両陛下が、震災から15年となる来春、岩手・宮城・福島の被災3県を訪問される方向で宮内庁が検討している。
という報道です。
三重で語られた「海と人の営みを次世代に手渡す」というおことばと、東北へのご訪問は、自然の恵みも災禍も、そして立ち上がる人々の姿も、すべては時の流れの中でつながっているという視座を静かに示しているように思えます。
陛下のお姿は、その時間の連続性に誠実に寄り添い続ける象徴でもあります。
■ 海を見つめ直すとき
水問題の研究をライフワークにしてこられた陛下は、記念講演「人の心と水」で、
「人の水への想いは、時間と距離を超え、アジア太平洋地域に生きる私たちの共感と連帯の土台を形作ってきた」
と述べられています( → 過去記事 )。
今回のおことばを読みながら、海は単なる生産空間や観光資源ではなく、
人間が自然とつながりを取り戻す場所であることを再び思い起こしました。
■ 「清い海」を未来へ
大会テーマは、
「受け継ごう 命あふれる 清い海」。
これは標語ではなく、自然と向き合う私たち自身の姿勢を問うメッセージです。
海の豊かさは誰か一人の努力だけでは守れません。
しかし、誰か一人の無関心によって失われてしまうことはあります。
三重の海で語られた陛下のおことばは、
私たちが未来に手渡すべき「静かな責任」をそっと思い起こさせてくれるものでした。
海神の夢を見た翌日に。

第44回全国豊かな海づくり大会
令和7年11月9日(日)(志摩市阿児アリーナ)
第44回全国豊かな海づくり大会が、昭和59年の第4回大会以来40年余りの時を経て再びここ三重県で開催され、皆さんと共に出席できることをうれしく思います。
四方を海に囲まれた我が国は、古くから豊かな海の恵みを受けてきました。また、山や森から河川や湖を経て海へ至る自然環境と、そこに育まれる生命や文化は、私たちに様々な恩恵をもたらしてくれます。この豊かな海の環境を保全するとともに、水産資源を適切に保護・管理し、次の世代に引き継いでいくことは、私たちに課せられた大切な使命です。
今大会の開催地三重県は、穏やかな遠浅の砂浜が広がる伊勢湾、リアス海岸の志摩半島、黒潮の影響を強く受ける熊野灘、さらには宮川みやがわを始めとする大小の河川など、豊かな漁場に恵まれています。そのような中で、漁船漁業のほか、伝統的な海女あま漁業や真珠養殖業など、古くから地域の特性をいかして多種多様な水産業が営まれてきました。私が幼少期に三重県を訪れた際に見た海女あまの作業の様子や、真珠の加工工程、そして緑に囲まれた青い海を船が行き交う風景は、自然豊かな海で営まれる漁業や、海と共に暮らす人々の日常を感じさせるものでした。
現在、三重県においては、豊かな海を次の世代に引き継いでいくことができるよう、漁業者と共に進めるイセエビやハマグリなどの資源管理、高水温に対応した真珠や魚類などの養殖技術の研究や、新たな栽培漁業対象種の技術開発に取り組んでいると聞いています。また、伊勢湾の豊かさを取り戻すための栄養塩類不足への対応や、藻場もば・干潟の造成など、海の環境を保全する取組も進められていると聞きます。
近年、気候変動の影響など、多くの課題に直面している漁業関係者の皆さんには御苦労も多いことと思いますが、本日表彰を受けられる方々を始め、全国各地において日頃から豊かな海づくりに取り組んでいる皆さんの活動が、今後とも多くの人々によって支えられ、更に発展していくことを希望します。
「受け継ごう 命あふれる 清い海」をテーマに行われるこの大会を契機として、海や漁業への人々の理解と関心が更に深まり、豊かな海づくりの輪がここ三重県から全国へ、そして未来に向けて大きく広がっていくことを願い、私の挨拶といたします。
出典:宮内庁HP https://www.kunaicho.go.jp/page/okotoba/detail/295#3561


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